カテゴリー
ここでは機械学習のカテゴリーについてさらに詳細に見ていくことにします。現在のAIの代名詞とも呼んでよい機械学習ですが、その技術的な領域は、多岐にわたり、さまざまなカテゴリーが存在しています。
さらにこれらを分類するにあたっては、解釈によって多少の相違があったり、日々開発される新しい手法によって今後変化していくことも考えられますが、現時点ではこれから挙げるカテゴリーが一般的だと言われています。
またこれらのカテゴリーは機械学習における代表的な手法と捉えてもらってもいいでしょう。
まずは教師あり学習(Supervised Learning)ですが、これは、課題の対象となる学習用のデータと、そのデータの中に同時に用意された、正しい(正解)とされたデータとの関係をモデル化するために使用される手法です。
このアプローチは、過去のデータをもとに、新たなデータに対して予測や分類を行うために広く用いられます。教師あり学習のプロセスは、それらのデータをセットすることから始まります。
例えば、メールのスパム判定の場合では、対象となるメールのテキストと、スパムであると指定した、つまりラベル付けしたメールテキストも用意してやります。
そしてデータを数学的理論に基づいて自動的に次々に正解データと比較、成否を判定し、且つその精度を高めていこうとするコンピュータープログラム、一般的にモデルと呼びますが、そのモデルを訓練していきます。
モデルは、データとラベルとの関係をパラメータや重みを自ら最適化することによって学んでいきます。ここでいう重みとは、何を重要視すべきかを示す数値と考えてください。
この学習を通してモデルはデータのパターンや関連性を捉える能力を獲得します。訓練されたモデルは、新たなデータに対して予測や分類を行うことが出来るようになります。
例えば、訓練済みのモデルを使用して新しいメールがスパムかどうかを判定出来るようになる訳です。モデルの性能を評価するために、別のデータセット(検証データまたはテストデータ)を使用します。
モデルの予測と実際の出力を比較して、精度や性能指標を計算します。このステップは、モデルの適切性を確認し、必要に応じて調整を行うのに役立ちます。なお教師あり学習の代表的な手法には、
線形回帰、決定木、ランダムフォレスト、サポートベクトルマシンなどがあり、分類(カテゴリ分け)、回帰(数値の予測)、画像認識、自然言語処理、音声認識など、多くの分野で広く使用されています。
教師あり学習は、多くの社会の問題に対して極めて高い効果を発揮する手法の一つであり、データから知識を抽出し、予測および意思決定をサポートするのに役立ちます。
次に教師なし学習(Unsupervised Learning)です。教師なし学習は、対象となるデータからパターンを抽出し、データ自体から構造を学ぶ手法です。特徴としては、ラベルや教師データが提供されないことです。
代わりに、この手法はデータ内の隠れた構造や関係性を発見しようとします。具体的な手法を幾つか取り上げます。まずはクラスタリングです。これはデータを異なるグループ(クラスタ)に分ける技術です。
顧客のセグメンテーションや文書クラスタリングなどがあります。ここでは詳しくは触れませんがK-meansクラスタリングや階層的クラスタリングが主要な手法として用いられます。次に次元削減というのがあります。
これは、データの次元を削減し、情報を圧縮します。これも詳細は省きますが、主成分分析(PCA)やt-SNEは、高次元データの可視化や特徴選択に使用されます。そして異常検知というのもあります。
これは、 正常なデータのパターンを学習し、異常なデータを検出します。セキュリティ監視や品質管理などで使用されます。最後に関連ルールの抽出です。データ内の頻繁に共起するアイテムやパターンを特定します。
この手法は顧客の購買履歴から商品間の関連性を分析する際に利用されます。教師なし学習は、データが大規模で複雑な場合や、データにラベルを付けるのが困難な場合に特に有用です。
また、データ探索や前処理段階でデータの特性を理解し、有益な情報を引き出すのに役立ちます。
教師のあり、なしで言うとラベル付きデータとラベルなしデータを組み合わせて学習する半教師あり学習(Semi-Supervised Learning)や、データ自体からラベルを生成し、
それを使用して学習する自己教師あり学習(Self-Supervised Learning)などというのもあります。興味のある方は調べてみてください。
次にご紹介する機械学習のカテゴリーは強化学習(Reinforcement Learning)です。強化学習は、機械学習の一分野で、
エージェントとして定義されるプログラムにおける内部的な学習者が、環境と相互作用し、行動を選択するプロセスを学習する方法を研究します。エージェントは特定の目標を達成し、環境からの報酬信号を受け取ります。
強化学習の目標は、最適な行動方針を見つけ、環境との相互作用を通じて報酬を最大化することです。
強化学習にはいくつかの主要な要素があります。まず先ほど触れたエージェント(Agent)ですが、 学習者としての役割を果たすプログラム内の主体的な対象で、環境と相互作用し、行動を選択します。
ここでいう環境(Environment)とは、エージェントが相互作用する外部のシステムや状況です。エージェントは環境から報酬を受け取ります。そして行動(Action)というのは、エージェントが選択できる選択肢や行動のセットです。
エージェントは行動を選択し、それに応じて環境から報酬を受け取ります。なお、報酬(Reward)というのは、エージェントが行動に対して環境から受け取る数値信号で、行動の質を評価するために使用されます。
さらにエージェントの行動戦略または方針を方策(Policy)と呼び、与えられた状況でどの行動を選択するかを定義します。強化学習の主要な手法には、価値反復法、ポリシー勾配法、Q学習、ディープ強化学習などがあります。
ここでは詳細については触れませんが、これらの手法は、さまざまなドメインで使用され、自動運転、ゲームプレイ、ロボティクス、資産管理など多くのアプリケーションで成功を収めています。
最後に時系列データ解析(Time Series Analysis)をご紹介して、本課題の説明を終えたいと思います。時系列データ解析(Time Series Analysis)は、機械学習の重要なカテゴリーであり、
過去から現在または未来にかけて時間の経過に伴うデータの変化を理解し、予測するための手法とアプローチを研究する領域です。時系列データとは、一定の時間間隔で観測されたデータの系列です。
例えば、日々の株価、毎月の気温、秒ごとのセンサーデータなどが含まれます。時系列データ解析の主な目的は、それらのパターンの発見、トレンドの予測、季節的な変動の理解、異常検出や未来のデータについて予測することです。
基本的な手法としては、機械学習で用いる手法の他に統計的手法や独自の時系列モデルなどが使用されます。これらの手法は、データの特性に合わせて選択され、株価予測、気象予測、需要予測、トラフィック予測、
エネルギー消費予測、医療データ分析など、さまざまな分野で利用されています。時系列データ解析は、予測や意思決定に時間の要素が組み込まれる多くのアプリケーションにおいて重要です。データから価値を引き出し、
未来を予測するために、多くの機械学習技術が活用されています。