製造業-1
ここからは、実際に企業がAIを導入した具体的な事例についてご紹介致します。14業界及びその他、更に行政まで合わせ、100余りのニュースリリースを集めてみました。各業界それぞれのドメインエキスパートにとって、いずれも重要な知見と成り得ますので、該当する事例は、しっかりと押さえておいてください。
では、製造業でAIを導入した事例です。
【ユーハイムのバウムクーヘン専用AIオーブン「THEO」】1
株式会社ユーハイム ニュース(2020年11月30日)のニュースリリースです。
株式会社ユーハイムは、画像センサーを搭載し、職人の技術を機械学習する、バウムクーヘン専用AIオーブン「THEO(テオ)」を開発し、2021年より実証実験を開始した。
ユーハイムは2020年に、菓子製造工程に添加物を使わないため、材料メーカーとともに、加工材料から添加物の排除を実践する「純正自然宣言」を行っている。この純正自然の菓子作りを進めながら、生産性を高めるためには、添加物のなかった頃の職人の技術の復活や継承、新たな職人の育成が欠かせない。その時間も手間もかかる過程のブレイクスルーとして、IoTやAIの技術を活用した。バウムクーヘン専用AIオーブン「THEO」は、職人が焼く生地の焼き具合を、各層ごとに画像センサーで解析することで、その技術をAIに機械学習させデータ化して、無人で職人と同等レベルのバウムクーヘンを焼き上げることを可能とする。
ユーハイムではこのバウムクーヘン専用AIオーブンをアバターイン社と共同開発することで、今後、菓子店間の遠隔操作や、消費者によるアバターを通じた焼成体験などの実証実験を行い、従来の流通体系とは異なるスタイルの販売ネットワークづくり、職人の技術継承、地位向上などを模索していくとしている。
【ブレインパッドのAIによる不良品検知プロダクト】2
株式会社ブレインパッド ニュースリリース(2020年12月17日)です。
株式会社ブレインパッドは、伝統工芸品「熊野筆」を生産する株式会社晃祐堂とともに、熟練した職人が実施してきた筆の穂先の検品工程を自動化する「不良品検知プロダクト」を開発・導入した。
職人による手作りの熊野筆は、筆先の大きさや膨らみなどがひとつひとつ微細に異なるため、これまでは、晃祐堂の熟練の職人が目視で検品作業を担っていた。しかし、一人前の職人を育てるには大変な時間と労力がかかるうえ、判断が難しい場合に良品・不良品の判定が人によって異なることもあるため、晃祐堂は、AIによる画像認識を活用することで、より正確な検品体制を構築したいと考えた。
ブレインパッドは、熊野筆の良品サンプル約300本の画像を360度から撮影するところから着手し、データサイエンティストがAIに「良品」の判断基準を学習させた。延べ約5,000枚に及ぶ撮影画像から不良品検知アルゴリズムを開発した結果、不良品の判定精度を90%以上にまで高めることに成功し、検品工程の1次スクリーニングとして十分な精度を確保した。開発された「不良品検知プロダクト」は、「ITや機械に不慣れなスタッフでも簡単に取扱いできるもの」との要望を満たすべく、穂首が360度回転する間に内蔵カメラが約20枚の画像を自動で撮影し、AIがこの画像を解析・認識することで良品・不良品の判別をわずか数秒で行うことに成功した。
ブレインパッドは、AIを使った「不良品検知プロダクト」の開発により、筆の生産工程の負荷を軽減するとともに、日本が誇る伝統工芸品の後世への技術継承にも貢献するとしている。
【5GとAIを活用した映像伝送・解析で、工場の作業を見える化】3
住友電気工業株式会社とソフトバンク株式会社のプレスリリース(2021年6月9日)です。
住友電気工業株式会社(以下住友電工)とソフトバンク株式会社は、スマート工場の実現に向けた取組みの一環で、5G(第5世代移動通信システム)を活用した映像伝送とAIを用いた映像解析により、工場の作業を自動的に、かつリアルタイムに見える化する実証実験を行った。
住友電工はソフトバンクの協力を得て、スマート工場の実現に向けて、5GやAI、IoTを活用した工場での作業者の行動分析など、DXで工場の生産性を向上させる取り組みを進めている。生産性の向上を図るには作業を見える化して分析する必要があるが、従来は人が手動で作業内容を記録し作業時間を計測した上で、作業の分類別にデータを集計しており、人的リソースがかかることや、実態の把握までに時間がかかることが課題となっていた。
今回の実証実験では、住友電工の工場内に高精細カメラを4台設置して作業の様子を撮影し、その映像をソフトバンクの5Gネットワークを利用して住友電工のデータセンター内のクラウドサーバーに伝送した。伝送された映像をAIが解析し、作業の分類や時刻との照合などを行った上で、作業を自動的かつリアルタイムに見える化することができた。
実証実験の結果、手動での作業時間の計測・集計や作業の分類にかかっていた人的リソースを大幅に削減できたほか、作業者は目標時間と実際の作業時間の差分を確認し、効率性を意識して作業に取り組むことが可能になった。また、作業時間のグラフをクリックすることで、該当する日付の作業映像を再生し、作業の遅延が発生した箇所を特定して原因を分析できるため、速やかに作業の改善や効率化を図ることができ、工場の生産性の向上につながっている。両社は、5Gを活用したソリューションビジネスの展開により、社会課題を解決するための取り組みを共同で進めていくとしている。
【NECソリューションイノベータの「NEC AI・画像活用見える化サービス」】4
NECソリューションイノベータ株式会社 プレスリリース(2021年8月17日)です。
NECソリューションイノベータ株式会社は、良品画像の学習のみでAI技術により良品・不良品(2級品)を検出・分類する機能を追加したクラウドサービス「NEC AI・画像活用見える化サービス/生産管理・検査支援」を主に食品製造業向けに提供を開始した。
従来のサービスでは、良品・不良品のそれぞれの画像を学習することで良品・不良品の検出・分類を行なってきたが、今回の「NEC AI・画像活用見える化サービス/生産管理・検査支援」は、独自アルゴリズムの追加により、収集した良品画像のみを学習するだけで良品・不良品の検出・分類を行うことを可能とした。例えばサバの加工ラインにおいて、サバ以外の魚種を想定できずあらかじめ画像を準備できない場合、良品(検出したいサバ)の画像のみを収集し学習することで、良品・不良品の検出・分類が可能となる。これにより、良品の多い検査対象物においても、発生頻度の低く画像の収集が難しい不良品や異物の検出が可能となり、対象物の状況に合わせた検査の実施と生産現場における検査業務の更なる改善が支援される。
また、併せて提供される「NEC AI・画像活用見える化サービス/学習モデル作成ツール」では、専門知識がなくともブラウザの画面上で学習モデルの作成や評価などの動作確認、学習モデルのクラウド環境への登録が可能となる。これにより、ユーザ自身で検査対象物の追加や判定条件の変更を行うなど、柔軟な対応が可能となる。