Ⅵ 業務提携契約

1 業務提携の類型

① 契約法的提携(技術、生産、販売業務等)、②組織法的提携(新会社共同設立等)

2 生産業務の提携

(1)法的性質と主な内容
・典型契約の諸要素が複合した非典型契約、混合契約となる場合が多い。 ・生産業務提携契約では、対象製品、部品、原材料の種類・品質・数量・コスト、生産方法、納期・履行地その他の履行条件、提携期間・解約、合意管轄等を特定する。 ・契約条項の例としては、①秘密保持条項、②最恵取引条項、③類似製品製造販売禁止条項、④品質保証条項(契約不適合、不完全履行)、⑤商標条項(取付け、支給、流用、制裁)、⑥知財条項(譲渡、実施権設定)、⑦技術指導、共同研究条項(派遣、期間、費用、情報交換、研究分担)。
(2)OEM契約
・Original Equipment Manufacturer契約、発注者ブランドでの生産受託 ・下請的取引、プライベートブランドの製造委託、ライン拡大の為の家電生産委託 ・OEM契約の特徴は、①発注者(投資負担、経営リスク軽減)、②受注者(利益拡大、設備・人員有効活用、特許・ノウハウ蓄積)
(3)コンピュータソフトウェア関発委託
・ソフトウェア開発委託契約は、売買、請負、委任等の諸要素が複合した混合契約 ・委託会社と受託会社間の「委託契約」で、開発完了納品・検収後の訓練やメンテナンスの委託業務範囲を明確化しておく。 ・営業秘密(トレードシークレット)、著作権(委託企業と受託企業の約定)の定め。

3 合弁契約

・民法上の組合、会社法上の株式会社等を利用した合弁事業
・株式会社形態での50%超出資の場合の少数派権利保護規定(取締役確保、拒否権等)
・有限責任事業組合LLP(Limited Liability Partnership)と合同会社LLC(Limited Liability Company)の活用
・民法上の組合契約では、出資内容は金銭、不動産等の現物、特許権、ノウハウ等の権利、労務など財産的価値があればいい。合弁事業の財産は構成員の共有に属し、全構成員の名義で行使し、損益の配分は出資割合による。組合の債権者は、組合財産に対して行使できるほか、各構成員に直接その権利を行使できる。組合に法人格は無い。
・株式会社を設立する場合は、別個の法人格となるので財産関係は全て合弁会社に帰属する。出資を上限とする間接有限責任なので、仮に合弁事業が失敗したとしても、拠出した出資金を失うのみで、合弁会社が負った負債を負うことはない。

Ⅶ 電子商取引

1 電子商取引(Electronic Commerce:EC)

① 企業間電子商取引(Electronic Data Interchange)を利用したBtoB
特定された企業間を電気通信回線で結び、受発注、発送、代金請求、代金回収を行う。
② インターネットを利用したBtoC
プロバイダの提供するネットオークション市場でのCtoCも増えている。
・経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」で①電子商取引、②インターネット、③情報財、④国境を越えた取引、の4分野の論点に関する解釈指針提示。

2 インターネットを利用した電子商取引

・電子メールで相手側に意思表示が到達した時に意思表示の効力が生じる(到達主義)。
・データ化けや改ざんにより内容が異なって伝わった場合、契約の錯誤により取り消しができる。
・消費者のキー操作の誤り(キャンセルキーと申込キーの誤り押下、1個を11個と誤入力)は、故意・重過失でなければ意思を欠く錯誤として取り消す事ができる。
・電子消費者契約法では、「消費者の申込み、承諾の意思を確認する処置を講じていない場合、消費者操作ミスを錯誤として取り消しができ、事業者は消費者の重過失を主張できない」として、申込み確認画面や訂正画面の処置を講ずるよう促している。
・「電子署名及び認証業務に関する法律」で、電子署名の法的な有効性を認証する民間の機関に認定制度を導入し、民間認証機関の信用力を確保し、電子商取引での本人認証と電子文書の正確性を担保している。