会社法法務士講座 > §7 発起設立の手続き①

1 発起人

(1)発起人とは、定款に発起人として署名した者をいう(26条)。
(2)制限行為能力者や法人も発起人になることができる。
(3)発起人の員数は1名でもよい。

2 発起人組合

(1)発起人が複数存在する場合、設立手続に入る前に会社の設立を目的とする組合契約が締結される(発起人組合、民法667条以下)。

(2)会社成立前に、発起人組合の組合員の過半数が会社名義で事業行為を行った場合、その法律上の効果は、組合員全員について生じ、成立後の会社には生じない。なぜなら、業務執行組合員の定めがない限り、対外的には組合員の過半数において組合を代表する権限を有するからである(最判昭35.12.9)。

3 設立中の会社

設立登記前の設立途上の社団を、設立中の会社という(権利能力なき社団)。
(1)発起人が会社設立のために取得し負担した権利義務は、形式的には発起人に帰属するが、実質的には設立中の会社に属しているので、会社が成立すれば、それらの権利義務は当然に会社に帰属する。
(2)設立中の会社に実質的に効果帰属する行為の範囲
①設立を直接の目的とする行為
②会社の設立にとって法律上・経済上必要な行為
③開業準備行為
④事業行為

4 発起人の権限の範囲

(1)発起人の権限は、原則として、設立を直接の目的とする行為と、会社に設立にとって法律上・経済上必要な行為のみに及ぶが、法定の要件を満たした場合には、例外的に財産引受にも及ぶ(最判昭33.10.24)。
(2)発起人の権限の範囲外の開業準備行為の効果
①成立後の会社による追認の可否
発起人の権限の範囲外の開業準備行為は無効であるから成立後の会社が追認しても効果帰属しない(最判昭28.12.3)。
②発起人が開業準備行為を行った場合の発起人の責任
無権代理人の行為に類似するから、発起人は民法117条の類推適用によって責任を負う(最判昭33.10.24)。

5 法人格の付与

設立登記により、株式会社は法人格を取得し成立する(会社法911条、49条)。

6 設立無効との関係

 失権により、結果的に発起人が一株も権利を取得しなくなった場合 ⇒ 設立無効事由があると解される。

7 その他

募集設立の場合にも、各発起人は、自ら一株以上株式を引き受ける。