会社法法務士講座 > §35 機関

機関総説

1 機関とは

 会社の意思決定又は行為をする者として法により定められている自然人又は会議体

2 一つのメルクマール

 機関設計のルールは、株主の利害関係の程度の違いにより、公開会社であるかどうかの軸と、会社債権者の会社に対する利害関係の程度の違いにより、大会社であるかどうかの軸によって整理できる。

3 機関設計の基本ルール

(1)全ての株式会社は株主総会及び取締役を置かなければならない。
 趣旨 
 所有と経営の分離

(2)取締役会の設置義務
①公開会社は取締役会を設置しなければならない。
趣旨
 公開会社では頻繁に株主が変動し、個々の株主が業務執行を十分に監視することは期待できない。ことから、業務執行を監視するために取締役会の設置が義務づけられている。
※取締役会は取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
②監査役会設置会社は、取締役会を置かなければならない。
趣旨
 取締役会を置かないという簡易で機動性の高い機関設計を選択した会社にとって、監視者がより多く複雑なシステムを選ぶ必要性に乏しい。
⇒取締役会を置かない場合は、監査役会を置くことができない。
③監査委員会設置会社・指名委員会等設置会社は、取締役会を置かなければならない。
理由
 監査等委員会設置会社は、監査等委員会である取締役を3人以上置くことで取締役会の監督機能を強化する制度であるから、取締役会の設置が義務付けられており、また、指名委員会当設置会社では、取締役会によって委員の選定・解職が行われ、指名委員会等が取締役会の機能の一部を担うという制度設計となっているため、取締役会の設置が義務付けられている。取締役会を置かなければ、監査等委員会・指名委員会等を置くことができない。

(3)監査役等の設置義務
①取締役会設置会社は、原則、監査役・監査役会・監査等委員会・指名委員会等のいずれかを置かなければならない。
∵取締役会設置会社では、株主に代わり業務執行を監督する機関が必要
ただし、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では、監査役をおくことができない。同様に、指名委員会等設置会社では、監査等委員会を置くことができない。
∵機能が重複し、責任の所在が不明確になる
②公開会社でない非大会社の取締役会設置会社では、会計参与を設置することで監査役の設置義務を免れる。
③会計監査人設置会社では、監査役・監査役会・監査等委員会・指名員会等のいずれかを置かなければならない。
∵経営陣と会計監査人の癒着を防止するとともに、会計監査人の適正な計算書類の監査を有効に機能させるために、監査役等を置くことで、会計監査人の経営陣からの独立性を担保する。

(4)会計監査人の設置義務
①監査等委員会設置会社。指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければならない。
∵業務執行者に大幅に権限を移譲するこれらの会社では、委員会による組織的な監査の前提となる内部統制システムが構築されている必要があり、それには会計監査人による適正な計算書類の作成を通じた財務面の監督が必要
②大会社は会計監査人を置かなければならない。
∵会社債権者を保護するために計算書類の適正化を確保する必要がある。