憲法 > §4 法の下の平等

 明治憲法において平等規定がなかったわけではない。ただ、公務就任権の平等というかたちでしか保障していなかった。
これに対して、日本国憲法では、法の下の平等の基本原則を宣言した14条の他にも、貴族制度の廃止(14②)、栄典に伴う特権の禁止(14③)、普通選挙(15③)、選挙人の資格の平等(44)、両性の本質的平等(24)、教育の機会均等(26)などの特別規定を設けて、平等権ないし平等原則の徹底化を図っている。もっとも世襲の天皇制は大きな例外である。

1.平等の観念

○まず、19世紀から20世紀にかけての市民社会において、すべての個人を法的に均等に取り扱いその自由な経済活動を保障するという形式的平等(機会の平等)は、結果として個人の不平等をもたらした。そこで、20世紀の福祉国家では、社会的経済的弱者に対して、より厚く保護を与え、それによって他の国民と同等の自由と生存を保障してゆくことが要請された。このような平等の観念が実質的平等(結果の平等)である。平等の理念は、形式的平等から、実質的平等をも重視する方向にある。

○14条の「法の下に」という文言を素直に読めば、法の下の平等は、法を執行し適用する行政権・司法権が差別してはならない、という法適用の平等のみを意味しているようにとれる。
 しかし、法そのものの内容も平等の原則にしたがって定立されるべきだという、法内容の平等をも意味する。法の内容に不平等な取り扱いが定められていれば、いかにそれを平等に適用しても平等の保障は得られないからである。

○法の下の平等の平等とは、絶対的機会的平等ではなく、相対的平等である。恣意的な差別は許されないが、法上取り扱いに差異が設けられる事項と、実質的な差異との関係が、社会通念からみて合理的であるかぎり、その取扱い上の違いは平等違反ではないとされる。たとえば、労働条件について女性を優遇し(生理休暇、育児時間、産前産後休暇)、年少者にかぎり特定の法律を適用し(喫煙、飲酒の禁止)、各人の資力に応じて税額に差異を設けることなどは一般に違憲とはいえない。

2.平等の具体的内容

・人種・・・日本では、とくにアイヌ民族問題が注目される。アイヌの文化の振興とその伝統に関する知識の普及・啓発に関する新法が制定された。
 外国人登録法等にみられる、外国人に対する取扱いの区別は、国籍の有無を基準とする憲法上の人権享有主体性の問題であるから、人種による差別ではない。

・信条・・・宗教上の信仰のみならず、思想上・政治上の主義も含む。

・性別・・・性別による差別は、1945年末に婦人参政権が実現し、憲法を受けて、姦通罪の廃止、妻の無能力などの女性を劣位においた規定を改正し、大幅に改められた。また、男女同権を後押しする条約として女子差別撤廃条約を批准し、国籍法の改正や、男女雇用機会均等法の制定がなされた。

・社会的身分・門地・・・社会的身分につき、判例は、「人が社会において一時的ではなしに占める地位」とする。門地とは、家柄のことである。

【補充】

◇尊属殺人重罰規定違憲判決

 かつて、刑法200条は、尊属殺人は死刑か無期懲役のみを規定していた。尊属殺人を普通殺人に比べて重罰を科すことが法の下の平等に反するのではないかどうか問われた。
 最高裁は、刑法200条を違憲無効とした。ただ、その理由については、尊属に対する尊重報恩という道義を保護するという立法目的は合理的であるが、刑の加重の程度が極端であって、立法目的達成手段として不合理であるとした。ただ、六名の裁判官は立法目的自体が違憲であると説いている。

◇再婚禁止期間違憲判決

男子には存在しないが、女子には再婚が禁止される期間があり、民法733条1項は6ヵ月の再婚禁止期間を設けていた。この法律の目的は父性の推定の重複(誰がお父さんかわからないという状況)を避けるところにあったが、6ヵ月ではなく、100日で父性の重複は避けることが可能である。よって最高裁は100日を超える部分に関して、(禁止期間そのものが違憲になったわけではない)「婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものとして、その立法目的との関連において合理性を欠く」として違憲判決を下した。