国民主権を基本原理とする日本国憲法において、参政権は国民の基本的権利として民主政治を実現する上で不可欠なものである。
憲法上、国民が選挙によって選定するものとしては、国会議員、地方公共団体の長、地方議会の議員があるが、罷免権としては、最高裁判所裁判官の国民審査しかない。
1.選挙の原則
普通選挙
職業、財産、納税、教育を選挙権の要件としない選挙→在宅投票制の廃止が問題となる。現在では、重度身障者の在宅投票が認められている。
平等選挙
選挙人の選挙権に平等の価値を認める選挙→議員定数不均衡が問題となる。投票価値の平等については、最高裁は、15条の文言上は「単に選挙人資格における差別の禁止が定められているにすぎないけれども、それだけにとどまらず、選挙権の内容、すなわち各選挙人の投票の価値の平等もまた、憲法の要求するところであると解するのが相当である」としている。
自由選挙 選挙人が自らの意思に基づいてその適当と認める候補者や政党に投票する選挙→棄権の自由が問題になる。
秘密選挙→選挙人がどの候補者に投票したかを第三者が知り得ない方法で行われる選挙→不正投票の調査の可否が問題となる。
直接選挙→選挙人が直接選挙する制度→間接選挙制、複選制の採用の可否。この点、間接選挙〇については、選挙人は、選挙が終了すれば、その地位も消滅するので、43条1項の選挙には間接選挙が含まれるが、複選制×における選挙人は、選挙が終了してもその地位は消滅しないため国民意思との関係が間接的に過ぎるから、43条1項の選挙には含まれない。
2.参政権の性格
選挙権の法的性格については、二元説が通説である。つまり、選挙権には参政の権利とともに公務の執行という二重の性格が認められる。したがって、公務としての特殊な性格に基づく最小限度の制限は許される。例えば、選挙犯罪者等の公民権停止は、最小限度の制限として許される。
また、選挙犯罪に限定せずに、禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わるまでの者につき選挙権を有しないと
しても違憲ではない。しかし、破産手続の決定を受けた者であっても、法律で国会議員の選挙権を全面的に剥奪することは違憲である。
被選挙権の性質
被選挙権とは、選挙人団によって選定されたとき、これを承諾して公民員となる資格をいう。判例は、選挙権と被選挙権を表裏一体として捉えて、15条1項に根拠を求めている。
【補充】
参政権に関する判例
参政権に関しては、最高裁の判例がいくつも出ているので結論と理由を押さえておこう。
○選挙犯罪者の選挙権、被選挙権を停止することを定めた公職選挙権の定めが憲法14条、44条に違反しないか
「国民主権を宣言する憲法の下において、公職の選挙権が国民の最も重要な権利」であったとしても、「選挙の公正はあくまでも厳粛に保持されなければならないのであって、一旦この公正を阻害し、選挙に関与せしめることが不適当とみとめられるものは、しばらく、被選挙権、選挙権の行使から遠ざけて選挙の公正を確保すると共に、本人の反省を促すことは相当である」として、合憲とした。
○連座制の合憲性
連座制とは、立候補の自由に関連して、選挙運動の総括主宰者ないし組織的選挙運動管理者等の選挙犯罪による候補者であった者の当選無効、立候補禁止を定めるものである。
最高裁は、連座制につき、「民主主義の根幹をなす公職選挙の公明、適正を厳粛に保持するという極めて重要な法益を実現するために定められたものであって、その立法目的は合理的で」、手段も全体としてみれば、目的達成手段として必要かつ合理的なものとして、合憲とした。
○秘密投票に関して
選挙権のない者又はいわゆる代理投票をした者の投票についても、その投票が何人に対してなされたかは、議員の当選の効力を定める手続において、取り調べてはならないとした。