行政法 > §24 行政裁量

1.行政裁量とは

行政行為をするに当たり、根拠法令の解釈適用につき行政庁に許された判断の余地のこと

2.要件裁量

法律要件の解釈、事実認定のあてはめ段階における裁量のこと

〇政治的裁量

政治的判断の必要性をもって認められる裁量。

【判例】
マクリーン事件
「更新事由の有無の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨」→この判断が違法になるには、「右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法であるとすることができる。

3.専門技術的裁量

専門技術的判断の必要性をもって認められる裁量

【判例】
*一般乗合旅客自動車運送事業免許に関し、ある程度の裁量的要素を認めている。
*原子炉設置許可における許可要件適合性の判断につき、専門技術的判断の必要性を理由に要件裁量を認めている。

4.専門技術的かつ政策的裁量

専門技術的かつ政策的な判断の必要性から認められる裁量 *都市計画における都市施設の規模、配置等の判断

5.効果裁量

要件が充足された場合に、どの程度の処分が適当かという処分内容の選択の段階と、その処分を実際にするかしないかという行為選択の段階における裁量。

6.裁量の限界と司法審査

行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲を逸脱し又はその濫用があった場合に限り、裁判所は、その処分を取消すことができる。
①事実誤認
行政行為は、正しい事実認定に基づいて行われなければならないため、事実誤認があれば、その行為は実体上違法となる。
目的動機違反
法の趣旨目的とは異なる目的や動機に基づいて裁量処分がなされた場合には、その処分へ違法となる。

【判例】余目町個室付浴場事件
県は開業予定地近くの町有地に児童福祉施設たる児童遊園を設置すれば開業を阻止できるとして、児童遊園の設置を同町に指導し、同町は設置認可の申請をし、知事が認可した事案。
→行政権の著しい濫用

③信義則違反
④平等原則違反
⑤比例原則違反
⑥基本的人権の侵害

【判例】エホバの証人剣道拒否事件

〇判断過程審査

 行政庁がなすべき具体的な比較考量・価値考量において、考慮すべき要素・価値を正しく考慮しているか、考慮すべきでない事項や過大に評価すべきでない事項を不適切に考量していないかなどの観点から、裁量審査の合理性を検討する。