行政法 > §32 行政指導

1 行政指導とは

行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

2 根拠

 行政指導は、その性質上、法的拘束力はなく、相手方の任意の協力によってその行政目的を実現するものである。もっとも、行政指導は、当該行政行政機関の所掌事務の範囲内でなければならない。

3 行政指導の方式と効果

・行政指導は文書で行うことは要求されていない。しかし、行政指導を行う者は、相手方に当該指導の趣旨、内容、責任者を明確に示さなければならない。
・行政指導が口頭でなされた場合において、書面でこれらを示すよう相手方から求められたときは、特別の支障のない限り、これに応じなければならない。
・行政指導が法の趣旨、目的を逸脱していれば違法となり、国賠訴訟の対象になる。(判例)

4 行政指導と不利益取扱い

 行政指導に法的拘束力には法的拘束力はないから、行政指導を理由に不利益取扱いをすることは許されない。
 違法建築業者に対し、水道局給水課長が違法建築の是正を勧告し、給水施設工事申込みの受理を事実上拒否した行為について、当該行政指導は勧告に過ぎず、原告も一年半も放置していたことを指摘して、不法行為責任を否定した。(判例)

5 許認可権限と行政指導

 行政指導には法的拘束力はないから、行政庁が、申請に対する応答留保、許認可権限に併せて行政指導を行うことで実質的に行政指導に従うように拘束することは違法である。

6 行政指導の中止等の求め

 平成26年度改正により、行政指導の中止を求める制度が新設された。違法な行政指導を行った行政機関に対して、その中止等を求めることができる。
 法令に違反する行為の是正を求める行政指導の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。

7 処分等の求め

平成26年度の改正により、国民の権利利益の保護の充実を図るべく、法令に違反する事実の是正のための処分又は行政指導を求める制度が新設された。
・規制的行政指導であり、根拠となる規定が法律に置かれている行政指導に限られる。
・申出資格は何人にも与えられている