保育所保育指針に明記がある通り、保育士は幼児の保育だけでなく、幼児の保護者に対する保護者支援や地域子育て支援をすることも求められています。保育所における保育相談や保育相談における相談・助言などソーシャルワーク機能を果たすためにも、ソーシャルワークの原理等を理解し、援助を展開することが必要です。
a.ソーシャルワークのアプローチ
面接では、問題の状況、要因など問題解決に必要な情報を取集するために対象者と関わります。ケアを必要とする人に効果的で効率的なサービスや資源を提供し、ケアを必要とする人の「
自己決定」を目的としている
ケアマネジメント。支援を必要としているが支援が届いていない人に積極的にかかわりながら援助に繋げることを
アウトリーチ。支援が必要な人が抱えている問題や課題、状況などを共有し話し合い、情報共有や問題解決を図る
ケアカンファレンス(ケース会議)。関係者、関係機関、地域住民、専門職などが支援を必要としている人の情報を共有し問題解決を図るために手だてを立て、支援が円滑に進むように連携する
ネットワーキング。支援を必要としている人に働きかける組織をつくり、人々が一緒になって、問題を解決するために必要なサービスを求めたりすることを目的とした
ソーシャルアクションがあります。
b.個別援助技術(ケースワーク)
個別援助、ケースワークを行う際の利用者と援助者の望ましい関係を示した原則「
バイスティックの7原則」は、保護者対応や保護者支援の場面で活用する原則です。
1つ目に
個別化。目の前にいる利用者のありのままの姿、利用者の個性を尊重し対応します。2つ目に
意図的な感情表出。利用者がありのままの感情を表出できるように支援します。3つ目に
統制された情緒関与。利用者の考えや情緒を理解しますが、利用者の考えや情動に飲み込まれることなく冷静に対応します。4つ目に
受容。利用者のあるがままの行動や態度を受けとめます。5つ目に
非審判的態度。利用者を善い悪いと審判せず中立な立場で対応します。6つ目に
自己決定。利用者の
自己選択と自己決定を尊重します。また、利用者の自己決定を誘導することはしません。7つ目に
秘密保持。利用者の情報を利用者の許可なしに漏洩しません。
※保育士試験の実例で頻出となるのが、5の非審判的態度、6の自己決定、7の秘密保持です。特に6の自己決定についてでるが、保育士は、保護者の相談対応において、助言や決断のための援助はしますが、今後の行動を決定することは絶対にありません。行動を決めるのは、子の第一義的責任のある保護者の役割です。保育士は、保護者の自己決定を尊重します。
c.ケースワークの展開過程
ケースワークの構造は、利用者、援助者、目的、援助関係、社会資源の5つに分けることができます。実際の支援の場では、インテーク受理面接による利用者について、利用者のニーズの把握から始まり、
必要な社会資源を活用しながら、問題解決に向かいます。問題が複雑である場合もあるため、相談者等の相互関係を図式化し、ケース全体を可視化して状況を把握するために、
エコマップや
ジェノグラム技法を活用しています。
〇エコマップ、ジェノグラム技法
エコマップやジェノグラム技法に代表されるマッピング技法は、福祉サービス利用者と関わりのある家族関係、社会的に関わりのある人々、社会資源の複雑な相互関係を、記号や関係線を用いて一目でわかりやすい形で描き出る方法をいいます。
ケースワークは7つの工程を経て進められます。ケースワークは
インテーク受理面接から始まります。利用者と初めて会う場がインテークです。この面接から、利用者と援助者の信頼関係を構築し、利用者の問題に対して援助ができるかどうか検討します。支援を受ける人の課題を明らかにするため情報収集を行い事前評価し、利用者の
ストレングスに着目しながら原因分析をするのがアセスメントです。
アセスメントに基づいた具体的支援計画の立案を行うのが
プランニング。利用者が問題解決をできるように自分の力を信じて行動できるよう
エンパワメントを高める援助を行います。また、支援のネットワークを形成し、介入していきます。この介入を
インターベンションとも言っています。計画された援助が順調に進んでいるかを評価する
モニタリング。援助によって利用者の問題は解決されたのかを検証、判断する
エバリュエーション。そして、援助の終息ある
ターミネーションへと流れます。
d.集団援助技術
集団援助技術(グループワーク)は、集団の持つ特性や力を活かして、個々人の力を引き出し、成長を図ると共に、集団の成長も図り、
集団と個人双方の伸長をねらう援助方法をいいます。
個別援助技術ケースワークと同様に、一人ひとりを個として理解する
個別化の原理。それぞれの
あるがままの姿を受け入れる
受容の原則。共に葛藤を解決しようと利用者に寄り添い、より良い方法を提示し支援し援助する
葛藤解決の原則、それぞれの能力に応じたグループの参加を促す
参加の原則、自主的に目標に向けてルールを策定し参加しやすいように援助する
制限の原則、メンバーが互いに協力し交流体験ができるように援助し、協働による成長を図る
経験の原則があります。
また、
グループワークは以下の準備期、開始期、作業期、終結期の4つの段階を経て展開されます。
e.地域援助技術(コミュニティーワーク)
地域援助技術コミュニティーワークは、地域の住民組織や関連機関の専門職(社会福祉協議会コミュニティーワーカー、ボランティア・コーディネーターなど)が中心となって、
地域社会の生活ニーズを調査分析の下、住民や専門機関と協働して地域の問題解決を図るために援助していく間接援助技術をいいます。コミュニティーワークの原則として、
住民ニーズの基本原則、
住民活動主体の原則、
民間性の原則、
公私協働の原則があります。