3.DXのステップ
■「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」
DXを進めようとするにあたって、忘れてはならない重要な概念に「デジタイゼーション(Digitization)」と「デジタライゼーション(Digitalization)」があります。
DXを成功させるにはデジタル化を着実に進めていく必要がありますが、そのためのステップとして必須とされるのが、「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」の2段階です。DXを実現するためには、まずこの2つのステップが企業内で進んでいることが重要です。この2段階はDXのための準備段階であることをはっきりと意識しないまま、DX自体と混同して考えられている場合が多いため、留意する必要があります。この2つのステップに未到達で、社内プロセスが未だにアナログ中心の企業がいきなりDXに取り組んでも、順調には進まないと考えられるからです。
もちろん、DXを実現するための組織が企業内で整備されている必要があり、またDXのために適切な人材を保有していることも重要になります。また社内だけではなく、DXを推進するためのパートナーや、調達環境、外部委託環境も必要になると考えられます。
■「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」の違い
どちらも日本語では「デジタル化」と訳されますが、その意味はかなり異なります。
「デジタイゼーション」とは言葉の通り、単なる「デジタル化」を指します。紙ベースで管理をしていたファイルや重要書類をデータベースに格納することや、従来は手作業で行われていた膨大な単純作業をRPA(Robotic Process Automation)で自動化することなどが、該当します。つまり、デジタル技術を活用することによって、自社のビジネスのプロセスを効率化する、あるいはコスト削減を行うことであると定義できます。
これに対して、「デジタライゼーション」とは、単にビジネスプロセスをデジタル化することではありません。デジタル技術を活用することで自社のビジネスモデルを変革し、さらに新たな事業価値や顧客体験を生み出していくことを指しています。
例えば、自動車を販売するという従来のビジネスモデルから、カーシェアリングのビジネスへ変更する場合、従来は存在しなかった、「車を利用する権利」をデジタルの手法により、複数ユーザーが共有するビジネスモデルへと変化を生み出したことになります。
また、レンタルビデオでDVDを貸すというビジネスモデルから、ストリーミングサービスによって動画を配信するサービスに変更すれば、そこでビジネスモデルの変革が行われたことになるとと考えられます。これが「デジタライゼーション」です。
DXを実現するためには、「デジタイゼーション」に留まることなく、「デジタライゼーション」を実行することで既存のビジネスモデルを変革し、新たな事業価値や顧客体験を生み出すことにつなげていくステップが必須であるといえます。
■企業のDXアプローチ
デジタル化が進んでいないアナログ業務を行なっている中小企業が、いきなりDXに挑戦するのは非常にリスキーであると思われるため、まず、自社のビジネスプロセスをデジタル化する=「デジタイゼーション」のステップから始めることが適切であると考えられます。
DXのために必要な人材や、どのような手法での推進が必要か、組織体制や制度などについては、第3課題の「DXの展開」で詳しく触れていきたいと思います。