金融資産運用 > 5.投資信託

5-1.投資信託の仕組みと特徴

投資信託とは、投資家が直接株式や債券に投資するのではなく、不特定多数の投資家から集めた資金を、専門家ファンドマネージャー)が複数の株式や債券などに分散投資し、それによって得られた収益を投資家に分配・還元するものです。

①契約型投資信託

契約型投資信託は、委託者(投資信託委託会社)が販売会社(証券会社や銀行など)を通じて投資家から資金を集めます。委託者は受託者である信託銀行と信託契約を結び運用指図を行い、集められた資金は受託者のもとで分別管理されます。得られた収益は投資家に分配・還元され、投資家のことを受益者といいます。

②会社型投資信託

会社型投資信託とは、有価証券や不動産などの資産への投資を目的とする会社投資法人)を設立し、投資家はその会社が発行する投資証券投資口)を取得することによって、運用益を配当金として受け取る形態の投資信託です。

③ディスクロージャー

投資家が公平な判断を行うことができるように、投資信託の基礎的情報を開示する必要があります。代表的な開示資料として目論見書(もくろみしょ)と運用報告書があり、いずれも委託者に作成が義務付けられています。
目論見書 その投資信託の概要や特色、リスクなどの注意事項、運用実績などが記載されている。投資家が投資信託を購入すると同時に交付が必要な交付目論見書と、投資家からの請求で交付する請求目論見書がある
運用報告書 運用経過や今後の運用方針、組み入れた有価証券の明細など投資情報として必要な情報を投資家に開示するもの。作成を義務付けられた委託者が、原則決算日ごとに作成する

④投資信託の価額

投資信託の価額には基準価額解約価額買取価額があります。
基準価額 1口あたりの信託財産の時価をあらわす。投資信託を購入するときの時価額に相当し、投資信託の購入や換金の場合にはこの基準価額をもとに計算される
基準価額=純資産総額÷受益権口数
解約価額 投資家が信託財産の解約を請求するときの約定価格。解約時にペナルティコストである信託財産留保額が差し引かれる場合もある
解約価額=基準価額―信託財産留保額
買取価額 投資家が金融機関に買取を請求し、換金するときの約定価格
買取価額=基準価額―信託財産留保額

⑤投資信託にかかる費用(コスト)

投資信託は、設定から販売、運営管理に至るまで複数の金融機関が介在するため、それぞれの段階で費用(コスト)がかかる。
(ⅰ)購入時手数料
販売手数料、申込手数料ともいう。投資家がファンドを購入する際に販売会社に支払う手数料で、一般的には購入金額の1~3%程度になっている(手数料には消費税が加算される)。同じファンドでも販売会社によって異なる手数料になる場合がある。手数料がかからない(ノーロード)場合もあるが、その分信託報酬に上乗せされている場合がある
(ⅱ)信託報酬
ファンドの運営管理にかかる費用で、運用期間(保有期間)中ずっとかかるコスト。購入金額の0~2%程度が一般的で、販売会社・投資信託運用会社(委託者)・信託銀行(受託者)がそれぞれ取り決めた割合で徴収する(日々徴収)。運用成績には関係なく保有期間中はずっとかかるコストなので、ファンドを選ぶ際の選択基準の一つとしてとても重要である。一般的に、公社債投資信託より株式投資信託の信託報酬が高めに設定されていて、パッシブ型よりアクティブ型のほうが高めになっている
(ⅲ)信託財産留保額
ファンドを解約するときに、その売買コストを徴収されることをいう。解約代金を捻出するために必要なコスト(有価証券の売買コストなど)は、ファンドを保有し続けている投資家に負担させるべきではないという考えから設定されている。このコストはファンドの中に還元され、基準価額などに反映されている。信託財産留保額を設定していないファンドも多くある