【老齢厚生年金(支給要件)】
老齢厚生年金は、被保険者期間を有する者が、次のいずれにも該当するに至ったときに、その者に支給する。
① 65歳以上であること
② 保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上であること(受給
資格期間を満たしていること)
・ 老齢基礎年金と同様に、「10年」には合算対象期間を含めることもできる。
【老齢厚生年金(支給対象)】
① 大正15年4月2日以後に生まれた者が対象となる。
② ①の者であっても、昭和61年3月31日において旧厚生年金保険の老齢年金、旧船員保険の老齢年金又は共済組合が支給する退職年金(昭和6年4月1日以前生まれの者に限る)、減額退職年金(昭和6年4月1日以前生まれの者に限る)等の受給権を有していた者には支給されない。
【老齢厚生年金の額の計算】
老齢厚生年金の額の計算については、総報酬制の導入前(平成15年4月1日前)と導入後(平成15年4月1日以後)に分けて処理する。
<平成15年4月1日以後の被保険者期間のみを有する場合>
【老齢厚生年金の額の計算(原則)】
老齢厚生年金の額は、被保険者であった全期間の平均標準報酬額の1000分の5.481に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて得た額である。
老齢厚生年金の額 = 平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間の月数
・ 平均標準報酬額に乗じる率を「給付乗率」とする。
【平均標準報酬額】
「平均標準報酬額」とは、被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額に、それぞれ再評価率を乗じて得た額の総額を、当該被保険者期間の月数で除して得た額をいう。
【再評価率】
厚生年金保険においては、被保険者であった間の報酬及び賞与を年金額の算定の基礎とする。しかし、過去において受けた報酬及び賞与をその額のまま年金額に反映させると、年金額が極めて低額になる可能性がある。そこで、過去の報酬及び賞与を現在の賃金水準及び物価水準に置き換える手法が採用されている(再評価)。具体的には、過去の報酬及び賞与に再評価率といわれる一定の率を乗じて現在の賃金水準及び物価水準に改める。
【給付乗率】
平均標準報酬額に乗じる給付乗率は、昭和21年4月1日以前生まれの者については、生年月日に応じて読み替える経過措置が設けられている。
生年月日大正15年4月2日?昭和2年4月1日の給付乗率は、原則1000分の7.308・総報酬制導入前1000分の9.500であり、それ以降給付乗率は漸減し、生年月日昭和21年4月2日以後給付乗率は、原則1000分の5.481・総報酬制導入前1000分の7.125で固定されている。
【老齢厚生年金の被保険者期間の月数】
老齢厚生年金の額については、受給権者がその権利を取得した月以後における被保険者であった期間は、その計算の基礎としない(受給権取得月の前月までを計算の基礎とする)。
(制度趣旨)
仮に、受給権を取得した日以後の期間も年金額の計算の基礎としてしまうと、年金額が毎月変わることになってしまい、年金の支給の事務が煩雑化するため、受給権を取得した月から被保険者資格を喪失した月の前月までの被保険者期間の分をそれ以降に反映させている。
【退職時改定】
受給権取得月以後に被保険者期間を有する場合には、被保険者である受給権者がその被保険者の資格を喪失し、かつ、被保険者となることなくして被保険者の資格を喪失した日から起算して1カ月を経過したとき、その被保険者の資格を喪失した月前における被保険者であった期間を老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、資格を喪失した日(「死亡」又は「70歳到達」以外の資格喪失事由のいずれかに該当するに至った日にあっては、その日)から起算して1カ月を経過した日の属する月から、年金の額を改定する。
・受給権者が70歳に達し、その被保険者資格を喪失した場合は、資格を喪失した日から起算して1カ月を経過した日の属する月から、年金の額を改定する(70歳到達時改定)。
<平成15年4月1日前の被保険者期間のみを有する場合>
【総報酬制】
平成15年4月からいわゆる総報酬制が導入され、報酬月額だけでなく賞与額についても保険料徴収の対象とし、給付額にも反映させることになった。導入前と導入後とでは賞与額が反映されるか否かの違いがあることから、導入前後に分けて算定した額を合算することになっている。
【老齢厚生年金の額の計算(計算式α)】
厚生年金保険の被保険者であった期間の全部又は一部が平成15年4月1日前(総報酬
制導入前)であるときは、以下の額となる。
老齢厚生年金額 =(①+②)
①→平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月以前の被保険者期間の月数
②→平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数
【平均標準報酬月額】
平均標準報酬月額とは、被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額に再評価
率を乗じて得た額の総額を平成15年4月1日前の被保険者期間の月数で除して得た額を
いう。
<平成12年の法改正前の仕組みによって額が計算される場合>