第5課題 これからの観光ビジネス

1.オーバーツーリズムとその対応

オーバーツーリズム

■ 訪日外国人旅行者の増加により、一部の観光地においては、地域住民と訪問する旅行者の間で、混雑やマナー違反などの課題が顕在化した。
■ オーバーツーリズムとは、特定の観光地において、訪問客の著しい増加等が、市民生活や自然環境、景観等に対する負の影響を受忍できない程度にもたらしたり、旅行者にとっても満足度を大幅に低下させたりするような観光の状況
■ 「観光公害」とも呼ばれる。
■ オーバーツーリズムの要因には、訪日外国人旅行者の急増だけではなく、観光そのものの変化による部分も大きい。
■ オーバーツーリズムは、持続可能な観光を実現するために向き合わなければならない重要な課題であり、適切な観光地マネジメントが求められている。

オーバーツーリズムの未然防止・抑制

■ 「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」
・ 2023年に、政府が観光立国推進閣僚会議を開催し、決定、公表。
■ 対策
・ 「観光旅行者の集中による過度の混雑やマナー違反への対応」
・ 「地方部への誘客の推進」
・ 「地域住民と協働した観光振興」

観光旅行者の集中による過度の混雑やマナー違反への対応

① 受入環境の整備・増強
■ 【観光旅行者が集中する地域における交通手段や観光インフラの充実】
・ 観光旅行者が集中する路線バスから鉄道への分散・乗り換えを促進・支援
・ 「手ぶら観光」の各地での導入を支援
・ チケット購入や運賃支払いのキャッシュレス
・ 多言語化を支援
・ 「MaaS」や配車アプリ等の導入・サービス拡充に対する支援
・ 空港業務人材の確保やスマートレーン導入等による生産性向上への支援
■ 【輸送力の増強】
・ 長編成LRT車両・連節バス導入等の車両長大化や、鉄道駅改良への支援
・ 供給力の徹底的な回復、乗合タクシー導入、混雑乗り場でのタクシーポーターの配置
・ タクシー不足に対応する緊急措置の実施
■ 【観光旅行者が集中する地域の受入環境の充実】
・ 歩行空間の拡大や交通結節点の整備等によるまちづくりへの支援
・ 道路・歩道整備、観光地での無電柱化加速化やカーシェア発着場所増
・ 国立公園を中心に入域料を導入し受入環境整備に活用
・ ICTを活用した「スマートごみ箱」の導入支援
・ 宿泊業の採用活動支援、機械化・DX化推進支援、外国人材の活用促進
・ Visit Japan Web等を活用した訪日外国人旅行者への民間医療保険加入促進を強化
②  需要の適切な管理
■ 【入域や交通の管理・規制】
・ エコツーリズム推進法や自然公園法に基づく入域規制やガイド同伴の義務化
・ 富士山での適正な入山管理、軽装登山、ごみ投棄等
・ 観光施設・駐車場予約システムやパーク&ライド駐車場整備等への支援
・ 地域における協議を踏まえた交通規制の実施
■ 【異なる需要に対応した運賃・料金の柔軟な設定】
・ 観光スポットへの急行バス導入促進と届出による運賃設定への規制緩和
・ 混雑運賃設定により、空いている時間帯・時期・場所への誘導・分散化
③  需要の分散・平準化
・ 観光スポットや周辺エリアの混雑状況の可視化・リアルタイム配信の導
・ 混雑状況を考慮した空いている観光ルート等の提案による誘導
・ 文化財や美術館・博物館等を早朝・夜間に体験する特別プログラムの実施
・ 休日と平日のバランスの見直し等、観光需要の分散・平準化のための高速道路料金割引の見直し
④ マナー違反行為の防止・抑制
■ 【旅マエ・旅ナカにおける啓発】
・ 統一ピクトグラムを策定、世界的な旅行ガイド本への掲載等を通じ周知
・ 意識の持ち方や行動例を示す「旅行者向け指針」を策定
・ 看板・デジタルサイネージ等の設置支援、多言語での情報提供
■ 【マナー違反の抑止】
・ 私有地や文化財等への防犯カメラ等の設置支援
・ 観光旅行者のごみ削減につながる行動変容の促進
・ 条例に基づく罰則等の整備に係る事例集を作成、地域向けに共有

地方部への誘客の推進

① 地方部の観光地の魅力向上
・ モデル地域における高付加価値なインバウンド観光地づくりの実現
・ 地域のコアバリューを磨き上げ、それを体感できるコンテンツや宿泊施設の充実等により滞在価値を向上させる、高付加価値な観光地づくりを促進
・ 全国各地で特別な体験や期間限定の取組等を自然、文化、食、スポーツ等の様々な分野で創出し、全世界に発信
・ 十和田八幡平、中部山岳、大山隠岐、やんばるの4国立公園における魅力向上とブランド化- 宿泊施設の誘致や自然体験アクティビティの提供など、面的な魅力向上を実施するたための支援
② 受入環境整備
・ 空港業務人材の確保や施設整備等への支援
・ クルーズ船の地方寄港や新たな地方周遊航路造成等の促進
・ マイナンバーカードを活用し、観光旅行者へのデジタルポイント付与等により広域周遊を促す。