課題4 次の壺井栄の「二十四の瞳」(「小石先生」より)の一節を、指示に従い3分程度で朗読してください。
指示1 登場人物がどのような環境で、何をしているところなのか、状況が目に浮かぶように朗読してください。
指示2 若い先生と生徒たちのやりとりを考えながら読んでください。
指示3 生徒たち一人一人の違いが分かるように読んでください。
どっと笑うなかで、先生も一しょに笑いだしながら鉛筆を動かし、その呼び名をも
出席簿に小さくつけこんだ。
「つぎは、
竹下竹一くん」
「ハイ」りこうそうな男の子である。
「そうそう、はっきりと、よくお返事できたわ。――そのつぎは、
徳田吉次くん」
徳田吉次がいきをすいこんで、ちょっとまをおいたところを、さっき、
岡田磯吉
のとき「いる」といった子が、少しいい気になった顔つきで、すかさず、
「キッチン」
と、
叫んだ。みんながまた笑いだしたことで
相沢仁太
というその子はますますいい気になり、つぎに呼んだ
森岡正
のときも、「タンコ」とどなった。そして、じぶんの番になると、いっそう大声で、
「ハーイ」
先生は笑顔のなかで、少したしなめるように、
「相沢仁太くんは、少しおせっかいね。声も大きすぎるわ。こんどは、よばれた人が、ちゃんと返事してね。――
川本松江
さん」
「ハイ」
「あんたのこと、みんなはどういうの?」
「マッちゃん」
「そう、あんたのお父さん、
大工さん?」
松江はこっくりをした。
「
西口ミサ子さん」
「ハイ」
「ミサちゃんていうんでしょ」
彼女もまた、かぶりをふり、小さな声で、
「ミイさん、いうん」
「あら、ミイさんいうの。かわいらしいのね。――つぎは、
香川マスノさん」
「ヘイ」
思わずふきだしそうになるのをこらえこらえ、先生はおさえたような声で、
「ヘイは、すこしおかしいわ。ハイっていいましょうね、マスノさん」
すると、おせっかいの仁太がまた口をいれた。
「マアちゃんじゃ」
先生はもうそれを
無視して、つぎつぎと名前を呼んだ。
「
木下富士子さん」
「ハイ」
「
山石早苗さん」
「ハイ」
返事のたびにその子の顔に
微笑をおくりながら、
「
加部小ツルさん」
急にみんながわいわいさわぎだした。何ごとかとおどろいた先生も、口ぐちにいっていることがわかると、香川マスノのヘイよりも、もっとおかしく、若い先生はとうとう笑いだしてしまった。
この部分は読まなくて結構です。
出典 壺井栄『二十四の瞳』(「小石先生」)より