【ヒトの急性放射線障害】
●放射線の種類
放射線と一口に言ってもいくつか種類がある。
アルファ(α)線:ヘリウム(He)の原子核である。
ベータ(β)線:電子である。+と−とがあり、+のものを陽電子(ポジトロン)と呼ぶ。
ガンマ(γ)線:電磁波の一種である。
エックス(X)線:発生の仕方が異なるだけでガンマ線とほぼ同じ性質を持つ。本試験で勉強するものである。
中性子線:原子核の中の中性子である。電荷を持たない。
*他にも存在するが、本試験レベルではこのくらい知っておくだけで良い!!
●放射線に関する単位の違い(図1)
ベクレル(Bq):物質が放射線を出す能力の大きさを表す。
グレイ(Gy):ある物体(モノ)に放射線が照射された際に、その物体が受けたエネルギー量を表す。
シーベルト(Sv):人体(ヒト)へ放射線が照射された際の人体への影響(被ばく線量)の大きさを表す。
*人体の各臓器に関しては“モノ”扱いであるので注意!!
*同じGyを浴びたとしてもどこの臓器に浴びたかなど、人体自体に現れる影響は異なる。そこで各臓器のGyの影響などを総合的に評価することで導くのが人体全体への影響を表すSvである!!
*エックス線用の単位はなく、放射線の単位をエックス線にも用いる!!
●放射線被ばく
3Gyが一つの基準線量となる。
(3Gyまでの被ばくの場合)
0〜3Gyの領域は不死域と呼ばれる。この領域の被ばくで死ぬことはないとされている(障害は起こることはある)。
血球数減少:0.25Gyの被ばくで認められる。
放射線宿酔(しゅくすい):1Gyの被ばくから現れ、頭痛、倦怠感、吐き気などが見られる。
(3Gy以上の被ばくの場合)
3Gy以上の被ばくにおいては死に至ることもある。
造血器官障害:3〜5Gyの被ばくでは、造血器官に障害が起きて死に至る(骨髄死)。死亡するまでの期間は30〜60日とされている。
なお、4Gyがヒトの半致死線量になる。
半致死線量:この線量の被ばくにより、被ばくした人の中のおよそ50%の人が60日以内に、主に造血器官障害により死亡するとされている。
この半致死量は、LD50/60(約50%が60日以内で死ぬ)とも表記される。
消化器官障害:5〜20Gyの被ばくでは、消化器官の障害が起きて死に至る(腸死)。死亡するまでの期間は5〜20日とされている。
中枢神経系障害:20Gy以上の被ばくにより、中枢神経系(脳や脊髄など)の障害が起きて死に至る(中枢神経死)。死亡するまでの期間は1〜5日とされている。
*ちなみに、被ばく線量が大きくなればなるほど、死亡するまでの期間は短くなる!